みてござる
ずーと昔のことだった
村の外れの路傍のほとり
ちいさな石のお地蔵さまが
やさしいお顔でたたずんでいた
村人たちは花供え
両掌をあわせて南無阿弥陀仏
五穀豊穣 家内安全
叶えておくれと願掛け地蔵
三方山に囲まれた里村は
不動のお滝の清水(きよみず)を
ありがた水とおしいただいて
春は田耕し早苗を植えた
夏は蛙(かわず)の声を聞き
夏草取りに汗流し
お地蔵さまに見守られ
秋には黄金(こがね)の稲穂が実る
村人たちの笑顔が集い
収穫祝う鎮守の祭り
多くの米が採れる村
村人たちはこの村を
いつしか多米村と呼んだとさ
多米の町には今もなお
そんな古(いにしえ)の景色が残る
日本の村の原風景を
お地蔵さまはみてござる